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大企業の社内ベンチャーから成功した企業

大企業の社内ベンチャーから成功した企業

「社内ベンチャー」とは企業が社内で新規事業を生み出すためにつくる独立した組織のことを意味します。

新たな事業を立ち上げるには、人材や資金や開発に必要なリソースを用意する必要があります。

スタートアップの場合は自己資金を投資してリソースを確保しますが、社内ベンチャーは企業から資金援助を得られ、リソースの活用も可能になるのがメリットになります。

また、企業を成長させるには、既存事業を継続するだけでなく新規事業の開拓も必要です。

社内ベンチャーによる新規事業の立ち上げは、新たな領域に展開するきっかけになります。成功すれば収益源の拡大も期待できます。

「社内ベンチャー制度」を導入している企業が多いですが、実際は失敗に終わり、損失を出してしまうことが多いのが現状です。

・スープストックトーキョー(三菱商事の社内ベンチャー)
・MonotaRO(住友商事の社内ベンチャー)
・エムスリー(ソネットの社内ベンチャー)
・駅探(東芝の社内ベンチャー)
・カブドットコム証券(伊藤忠商事の社内ベンチャー)
・マガシーク(伊藤忠商事の社内ベンチャー)
・スポーツクラブ ルネサンス(大日本インキ化学工業の社内ベンチャー)
・プロパティデータバンク(清水建設の社内ベンチャー)

今回は社内ベンチャー制度により成功を収めたベンチャー企業の事例について紹介します。

今後のビジネスの参考にしてみてください。

スープストックトーキョー(三菱商事の社内ベンチャー)

食べるスープの専門店「スープストックトーキョー」は、もともと三菱商事社員でケンタッキーフライドチキンに出向中であった現社長の遠山氏による社内ベンチャーです。

1999年に創業し、現在は全国60以上の実店舗とオンラインショップを展開しています。スープストックトーキョーの強みは「ブランド力」です。

スープ専門店といえば「スープストックトーキョー」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

新規事業のブランディングやマーケティング施策を練る際、「ペルソナ」を事前に設定することが重要と言われています。

ペルソナとは、商品・サービスの対象ユーザーを具体的に練った、架空の人物像を指します。

スープストックトーキョーは立ち上げ時、「秋野つゆ」というペルソナ設定をしました。

その設定内容は、以下の通りです。

スープストックトーキョー(三菱商事の社内ベンチャー)の基本情報

・秋野つゆ
・37歳
・女性
・都内在住
・独身か共働きで経済的に余裕がある
・都心で働くバリバリのキャリアウーマン

スープストックトーキョー(三菱商事の社内ベンチャー)の特徴

・社交的な性格
・自分の時間を大切にする
・シンプルでセンスの良いものを追求する
・個性的でこだわりがある
・装飾より機能を好む
・フォアグラよりレバ焼きを頼む
・プールに行ったらいきなりクロールから始める

以上の詳細なペルソナ設定を行った後は、秋野つゆに通ってもらうために、メニュー内容、店舗の外観・内装、立地など、全て「秋野つゆ」好みに設定していくのです。

例えば出店場所はオフィス街、駅チカの店舗に限ります。

また、「秋野つゆ」が行かないであろう若者の街渋谷に店舗はなく、ペルソナをもとにした戦略が徹底されていることがわかります。

公式サイトには、以下のように誕生ストーリーとコンセプトが書かれています。

『Soup Stock Tokyoが創業したのは1999年。当時女性がひとりで気軽に入れるファストフードはどこにもありませんでした。

安心、安全でおいしい食事がゆっくりと食べられて、働く女性が自分の「居場所」として共感できる場所が必要でした。

カウンターでひとり、スープをすすっている女性が思い浮かんだことをきっかけにSoup Stock Tokyoはスタートしました。

今では全国に60以上の店舗を持つようになったSoup Stock Tokyoですが、どれだけ広がっても「おいしいスープを食べてもらいたい」という思いを常に忘れず、それがすべてにおいての判断基準になっています。

この「カウンターでひとり、スープをすすっている女性」こそ秋野つゆであり、今では全国にいる「秋野つゆ」がSoup Stock Tokyoに共感し、またブランド自体も秋野つゆの人生が進むに合わせてメニューや店舗コンセプトなどに変化を与え続けているのです。』

このような「秋野つゆ」に対する詳細なマーケティング戦略を行ったことで、創業わずか10年で、売上高42億円、52店舗と急成長することができたのです。

MonotaRO(住友商事の社内ベンチャー)

「工具のアマゾン」と呼ばれるインターネット通信販売のMonotaRO(モノタロウ)。

2000年10月に住友商事と米国グレンジャー社の出資により設立され、事業主向けサイト「MonotaRO.com」をオープンしました。

MonotaROは、切削工具や研磨材などの工業用資材から自動車関連商品や工事用品、事務用品に至るまで、現場・工場で必要とされる製品1,800万アイテムを販売しています。

そのラインナップ数もさることながら、サプライチェーンの大幅短縮や新規顧客の大幅増加、商品のデータベース化などを実施。

これらがモノタロウ大躍進の主な要因となっていると言えます。

また、問屋や卸は大口発注の大企業には安価に納品し、どうしても小口発注になってしまう中小企業には相対的に高く、納品も後回しにされている状況にありました。

MonotaROでは、そんな従来のおこなわれていた商習慣に商機を見出したのです。

発注は1点からでき、ネジ1本から当日出荷、翌日配送を可能としています。

「現場」のユーザーにとっては納期が何より重要な要素であることを理解し、取扱点数は800万点で当日出荷品は29.3万点、翌日出荷は12.9万点を誇ります。

その圧倒的なスピードとリードタイムが評価され、登録ユーザー数は130万件を超えるほどです。

元々は事業者向け工業用資材の通信販売サイトとして始められましたが、いまやBtoCも含めた通販全体でも「ひとり勝ち」といわれるほど好調を記録しています。

エムスリー(ソネットの社内ベンチャー)

エムスリーは2000年に設立された会社ですがわずか4年で上場をしています。

時価総額は一時1.5兆円を超え、国内医療ITでは圧倒的No.1の企業であり、また2017年には米Forbesの「世界で最も革新的な成長企業」でも5位(日本企業の中では1位)に選出され、世界でも存在感を示します。

エムスリーの特徴は当時日本にも世界にも無かったビジネスモデルです。

彼らは自分達のビジネスモデルを特許申請をしており認可を受けていますが、インターネットを使ったビジネスモデルに特許が認められたのは日本ではエムスリーが初の事例です。

エムスリーは、IT化が進んでいなかった医療業界にいち早くITを活用したサービスを展開し、製薬会社の非効率的、かつ高コストなMRを使った営業・マーケティング手法のIT化を実現しました。

「m3.com:」という医療ポータルサイトを開設し、医療ニュース配信、コミュニティサイト、海外の最新論文等の文献検索等のサービスを医療従事者に提供しています。

現在、約25万人の医師が「m3.com」に登録しています。海外も含めたエムスリーグループ全体では、350万人の医師が利用しています。

また、同医師会員向けに人材紹介事業も展開、医師・薬剤師向けのキャリア事業でもNo.1となります。

エムスリーの事業内容はインターネットを使った医療コストのカットです。

医療コストのなかでも、製薬会社のマーケティングコストを最適化するという価値を主に提供することでこれまで成長してきました。

気づいたときには、他社が追随できないほどの医療界圧倒的No.1の企業となっていたのです。

駅探(東芝の社内ベンチャー)

駅探(えきたん)は、インターネット上に交通情報を提供するサイトを運営している企業です。主なサービスは乗り換え案内です。

鉄道・飛行機・バスなどの乗継などで困ったときに、みなさんも利用されたことがあると思います。

もちろんインターネットだけでなく、携帯電話やスマートフォンで検索可能です。

顧客規模としては、携帯有料会員約90万、携帯サイト・PCサイトの無料利用者数各々月間約300万、法人顧客100サイト超と業界屈指の規模を誇ります。

駅探の前身である「駅前探険倶楽部」が1997年に株式会社東芝のIP事業推進室内でパソコンや携帯端末向けの乗換案内サービスとして開始しました。

1999年に、株式会社NTTドコモが提供している携帯電話のインターネット接続サービスであるiモードサービスを開始する際に、最初の公式コンテンツの一つとして、携帯電話向け乗換案内サービスの提供を開始します。

その後、KDDI株式会社、ソフトバンクモバイル株式会社、株式会社ウィルコム等のキャリア向けに順次サービスを拡大していき、2003年に株式会社東芝より分社化して駅探が設立されたのです。

カブドットコム証券(伊藤忠商事の社内ベンチャー)

1999年4月に伊藤忠商事やマイクロソフト他の出資で設立された日本オンライン証券と、同年11月に「イー・サンワ証券」として設立された旧三和銀行系列のオンライン証券会社であったイー・ウイング証券が、2001年に合併した事により、インターネット専業の証券会社として誕生しました。

現在は「auカブコム」という社名に変わっており、証券は三菱UFJフィナンシャル・グループのネット証券会社として、約117万の口座と2兆2687億円の預り資産を誇ります。

大手ネット証券で唯一、システムのほぼすべてを自社開しています。顧客の取引ニーズに応えるべくAPIによる協業を深め、セキュアな取引環境を実現しています。

magaseek:マガシーク(伊藤忠商事の社内ベンチャー)

ファッション業界のECサイトの開発・運営を行っていいます。2000年、伊藤忠商事の社内ベンチャーから生まれました。

主力サイトである「MAGASEEK」に加え、2013年にはNTTドコモと資本提携を行い「d fashion」サービスを開始。

総会員数は250万人を超え、2000以上のブランドを扱うまでに成長しました。2019年度には300億円に迫る取扱高に成長しました。

スポーツクラブ ルネサンス(大日本インキ化学工業の社内ベンチャー)

株式会社ルネサンスは、1979年、DIC株式会社(当時大日本インキ化学工業株式会社)の化学技術者であった斎藤(現会長)さんが、社内ベンチャー事業としてインドア8面のテニススクールを企画し、スポーツ事業部をスタートしたのがきっかけです。

「スポーツクラブ ルネサンス」を日本全国に約100店舗展開し、小型の施設として、女性専用フィットネススタジオの運営も行なっています。

日本初上陸となる圧倒的映像美の中でサイクリングを楽しむ、VR映像を用いた「CYCLE & STUDIO R Shibuya」も特徴的です。

2012年から介護事業にも参入し、リハビリ特化型デイサービス「元氣ジム」を展開するなど、人々の健康に関わる事業を行なっています。

フィットネス業界の売上シェア国内3位、世界10位を誇り、東証一部上場も果たしています。

プロパティデータバンク(清水建設の社内ベンチャー)

プロパティデータバンクは、2000年に清水建設でスタートした社内ベンチャーです。

パッケージソフトが全盛期だった当時に「ソフトウエアは販売しない」ことに舵を切り、世界でも初めての不動産管理分野のクラウドを構築し、全国どこからでもデータの入力、確認ができ、一元管理が可能。不動産に関するあらゆる業務支援を「@プロパティ(アットプロパティ)」だけで完結させることに成功しました。

クラウドサービスの品質の高さや業務効率が飛躍的に向上することが評価され、日本全国約13万棟の建物や不動産で活用されるに至り、利用棟数においては日本国内の不動産関連ソフトの中で随一の実績を誇っています。

【まとめ】大企業の社内ベンチャーから成功した企業

大企業の社内ベンチャーから成功した企業について紹介しました。

社内の資源や人材を有効活用し、社内に新しい風を吹かせる「社内ベンチャー制度」では、社員側が情熱をもって取り組むことはもちろん大切なのですが、企業側もしっかりした体制で社内ベンチャーを迎え入れ、会社を成長させようとすることが大事です。

テキストのコピーはできません。